2005年 07月 08日
老い
腰骨や背骨がかなり変形しているのに、祖母は家の中でよく動いていた。
食事も作るし、居間の椅子と和室のベッドを一人で行き来する。
あちこちに掴まりながらだけれども、自分の足で動く。
医者は不思議に思うらしいが、動けるならどんどん動かそう、そう言ったようだ。
更に、祖母には食欲がある。
あちこち痛くても、具合悪くても、
「はらへった」
と口にする。
検査結果が出ない間、食事を禁じられていたのだけれども、行くといつもそう言う。
これも医者には驚きだったらしい。
だから一通り検査が済むと、すぐに食事に踏み切った。
食べられなくなると、一気に弱くなるから。
よくしゃべる。
祖母に痴呆はない。
確かに老人特有の、同じことを何度も話すというのはあるし、昨日のことと今日のことが混同してしまうこともよくあるけれど、話し方はしっかりしているし、私たちの顔を見て誰だかすぐに認識できる。
CT撮っても脳に異常はない。
悪いところを押さえながら、痛みを取りながら、うまくバランスを取って日常に戻せるだろうという、医者の見解。
ただ、身体が先に悲鳴を上げてしまったのだ。
母がまだ小学生の頃、祖父は亡くなった。
それから女手一つで子供四人を育てたのだ。
身体にかかった負担は、老いてから出るのだという。
働き過ぎ、疲れ過ぎた身体は、どんどん言うことをきかなくなる。
もう随分前から、助けなしに表を歩くことが出来なかった。
会社の近くには明治座がある。
ゆっくりとだけれど、それでもしっかり歩くご老人方が楽しそうに入っていくのを見る。
祖母にはそんな老後はなかった。
母にはそれが、悔しいようだ。
今は確実に先に繋がる。
もう少し身体を労わらないと、いけないなぁ。
by blue_wind_xx
| 2005-07-08 12:44
| 日常